50代は保険に入らないほうが得!?終活で保険を見直すポイントをFPが解説
50代になると、そろそろ終活を始める人が出てきます。
終活では、自分が加入している保険についても見直しを行う必要があります。
では、どのようなことに注意して保険の見直しを行えばよいのでしょうか?
この記事では、50代の終活で保険の見直しを行う際のポイントについてまとめましたので、参考にしてください。
保険はいつ見直しするべき?
自分の加入している保険の見直しを行う時期は、ライフステージが変わったときです。
なぜなら、必要となる保障内容や保障額が変わるからです。
一般的には次のような時期に保険の見直しを行うと良いとされています。
- 結婚したとき
- 出産したとき
- マイホームを購入したとき
- 子どもが社会人になって独立したとき
- 老後や相続対策を考えるようになったとき
また、次のような時期にも保険の見直しが必要と考えられます。
- 配偶者が勤めを辞めて扶養家族になったとき
- サラリーマンから自営業になったとき
とはいえ、多忙な日々を過ごしている中で、自分の保険を見直すということは、なかなかできるものではありません。
もし50代で終活を行うのであれば、保険の見直しを行うよい機会になります。
実際に見直しを行ってみた結果…
現在加入している保険の内容を、きちんと把握できている人はあまりいないのではないでしょうか?
多くの人が、すすめられるままに加入し、そのままにしてしまっているのではないでしょうか?
50代の男性が行った保険の見直しの一例を見てみましょう。
必要な保障を、大まかには死亡保障と医療保障に分けて見直しました。
死亡保障
保障額 (見直し前)3,000万円 → (見直し後)2,500万円
- 終身保険A 月払保険料 6,000円・・・据え置き
- 終身保険B 月払保険料 15,000円・・・解約
- 団体定期保険 月払保険料 10,000円・・・据え置き
死亡保障については、二人の子どもが社会人になって独立したため、最低限の保障として自分の葬儀費用に的を絞り見直しました。
終身保険は20代にすすめられるままに加入したものでした。
20代で加入したため毎月の保険料が6,000円ほどで、保険料の払込みが60歳で完了するため、そのままとしました。
保険金額が500万円ほどありますので、自分の葬儀費用などのために最低限の保障として確保しました。
最近は、家族葬など新しい葬儀のかたちが注目されるようになり、従来ほど葬儀費用がかからなくなってきています。
500万円の保険金から葬儀関連の費用を控除しても、保険金が残ることが考えられますので、その場合には残された妻の生活資金にあてることができると考えました。
自分の遺族年金があるため、他の金融資産と合わせれば、残された妻の生活資金は確保できると考えました。
一生涯の保障と貯蓄を目的として、もうひとつ30代に終身保険を契約していましたが、毎月の保険料が15,000円ほどと高く、他の金融商品に切り替えるために解約しました。
会社の団体定期保険に加入しており、これまでの遺族の生活保障は団体定期保険でカバーしてきました。
団体定期保険は必要保障額に合わせて、年齢の上昇とともに保険金の加入限度額が減少し、負担する保険料も下がっていきます。
団体定期保険は、一般に生命保険会社の定期保険に加入するよりも保険料が安く、1年間の保険期間で、制度全体の保険金支払後に余りがあれば、保険料が戻ってきます。
とても良い保険なのですが、団体定期保険は会社を退職すると保障がなくなります。
会社退職時に、これに代わる保障が本当に必要か再検討することにしました。
もし必要であれば定期保険に別途加入することとしました。
医療保障
入院給付金日額 (見直し前)5,000円 → (見直し後)10,000円
- 医療保険C 月払保険料 7,000円・・・据え置き
- 医療保険D 月払保険料 4,000円・・・新規加入
- がん保険 月払保険料 6,000円・・・見直し
- 介護保険 月払保険料 3,000円・・・新規加入
年齢の上昇とともに、生活習慣病のリスクが高まってることに不安を感じていました。
そのため医療保障については、公的保険制度による保障も考慮し、保険の見直しを行いました。
ご自身はがんの家系であったことから、がん保険について集中的に見直しました。
がんと診断されたら一時金が受け取れ、通院の保障、抗がん剤・ホルモン剤治療や先進医療を受けたときの保障を充実させました。
現在加入している保険を見直し、毎月の保険料は6,000円ほどになりました。
また現在加入している医療保険では、入院給付金日額が5,000円でした。
差額ベッド代や入院時の食事代など健康保険ではカバーされない自己負担費用は、民間の医療保険で備えなければなりません。
入院給付金日額5,000円で毎月の保険料が4,000円ほどのシンプルな医療保険に新規加入し、保障を厚くしました。
50代になると、健康状態によっては、加入できなかったり、割増保険料などの特別条件が付加されることがあります。
このケースでは特別条件なしで加入できたので、幸いでした。
日帰り入院でも5日分の入院給付金が受け取れるなど、医療保険の商品改定は頻繁に行われています。
最新の保障にするために、現在加入している保険を解約して、新しい保険に入り直す、ということを考えがちです。
新しい保険に入り直すと、現在の年齢で保険料を計算するため、通常は保険料の負担が増えてしまいます。
健康状態によっては、加入したくても加入できないこともあります。
一度解約をしてしまうと元に戻すことはできません。
加入している医療保険を活かしつつ、不足する分を新規の保険で補うということも考えましょう。
さらに家計に少し余裕があったので、毎月の保険料が3,000円ほどの介護保険にも新規加入しました。
この介護保険は保険料の払込方法が終身払となっていますが、要介護と認定されると、以後の保険料の払込みは免除されるというものでした。
保険の見直しをした結果、次のようになりました。
死亡保障のうち終身保険については、ひとつは自分の葬儀費用などのために最低限の保障を確保し、もうひとつは解約して他の金融資産に変更しました。
死亡保障のうち会社で加入している団体定期保険は、退職時まではそのままとしました。
医療保障のうちがん保険については、新しい保障を追加しました。
医療保障のうち入院給付金日額については、5,000円から10,000円に保障を厚くしました。
将来の介護リスクに備えるため、介護保険に新規加入しました。
保険の見直しは、何かきっかけがないと、なかなかできないものです。
そして保険の見直しをする際には、必要な保障について考えることとあわせて、保険料をずっと支払っていけるのか、ということまで考えることが大切です。
なぜ50代で保険の見直しが必要なのか?
50代で保険の見直しが必要とされる理由としては、主に3つ考えられます。
①必要となる保障ニーズが変化するから
40代までの生命保険の加入目的は、自分にもしものことがあったときの遺族の生活保障がメインでした。
50代になると順々に子どもが独立し、もしものときの保障は配偶者の生活保障を中心に考えるようになり、必要とされる保障額は減ります。
また、最低限の保障として自分の葬儀費用だけは確保したい、というニーズもあります。
一方で、年齢の上昇による健康上の不安から、医療やがんに対する保障の必要性を強く感じるようになります。
見直す時期を先延ばしにすると、年齢が上がるにつれて、保険料が高くなってしまいます。
②病気の罹患リスクが高まるから
50代になると、働き盛りのストレスなどから、がん・脳卒中・心臓病・糖尿病などの生活習慣病の罹患率が急速に高まります。
健康状態によっては、新たに保険に加入したくても 保険に入れないということが起こります。
健康上の不安が増すため、医療保障に対するニーズが強くなり見直しが必要になります。
③老後のことを考えるようになるから
50代になると、子どもの教育資金や住宅ローンの返済にも目途がついてくるため、具体的な老後資金について考えるようになります。
人生100年時代と言われるように、リタイア後には長い老後生活が待っています。
保険に加入して必要な保障を確保することとは別に、保有する資産を上手く運用して、老後の生活資金も確保しなければなりません。
また、多額の資産や分割しにくい資産があるのであれば相続対策が必要となり、相続対策に生命保険を活用することを考えます。
50代で保険の見直しをするときの注意点
50代で保険の見直しをするとき、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか?
そのポイントについて見てみましょう。
〇本当に必要な保険なのかを考える
言われるままに加入して保険料を払い続け、見直しをせずにそのままになっている保険については、今後も本当に必要な保険なのかを検討する必要があります。
リタイアして、収入がなくなっても、保険料を払い続けて確保しなければならない保険なのかを検討します。
保険料の負担を抑えるには、解約せずに、保障額を減額するという方法もあります。
「最低限の保障として、自分の葬儀費用・お墓代のための資金に備える」という考えをお持ちの方が多いです。
しかし保険だけにお金をかけるわけにはいきません。
老後資金を確保しておくことも必要です。
本当に必要な保険なのかを検討してください。
〇子どもの独立のタイミングで見直しをする
保険の見直しは、何かのきっかけがないと、なかなかできません。
まだ子どもが独立する前は、自分にもしものことがあったときに備えて、死亡保障を厚くする必要がありました。
しかし、子どもが独立したにもかかわらず、保険の見直しをせず、死亡保障を厚くしたままでは、いつまでも高い保険料を支払うことになってしまいます。
子どもが独立したら、保険の見直しを行い、今まで支払っていた保険料を老後資金にあてることを考えるべきです。
〇保険料の払込みを中止する、払済保険や延長(定期)保険への変更を検討する
払済保険や延長(定期)保険に変更することで、保険料の払込みは中止しても、一定の保障を確保することができます。
払済保険とは
保険料の払込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間をそのままにした保障額の少ない保険に変更する方法
延長(定期)保険とは
保険料の払込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、死亡保障のみの定期保険に変更する方法
払済保険や延長(定期)保険の活用も検討してみましょう。
〇貯蓄で対応できるものは貯蓄で対応する
掛け捨ての保険の場合、保険事故が起きなければ保険金の支払いがないため、掛けたお金は戻ってきません。
十分な貯蓄があるのであれば、保険には加入せず、貯蓄で対応するということも考えられます。
国の公的保険がありますので、無理に保険に加入する必要はありません。
〇がんなどの生活習慣病に対する保障の見直しを重点的に
50代になると生活習慣病の罹患リスクが急速に高まりますので、生活習慣病に対する保障を重点的に見直しましょう。
例えば、がんと診断されたときに一時金が受け取れる保険であれば、がんで働けなくなったときの収入減をカバーすることもできます。
最新の保障として、通院の保障、抗がん剤・ホルモン剤治療や先進医療を受けたときなどの保障について考えることも必要でしょう。
2人に1人ががんにかかる、といわれる時代です。
特にがんの家系の人は要注意です。
〇保険期間満了で特約の医療保障が切れてしまうことに注意
終身保険などに特約で付いている医療保障の保険期間は、60歳や65歳などの定年退職時期にあわせているケースが多いです。
この場合、主契約の保障は続いていても、特約の医療保障が途中でなくなってしまいます。
医療保険に別途加入するなどして、必要なときに医療保障が切れないようにしておくことが何より大切です。
〇相続対策が必要な場合、生命保険の活用を考える
生命保険は相続対策に有効です。
相続税対策としての「納税資金対策」「税負担軽減対策」、そして「遺産分割対策」に生命保険を活用することができます。
具体的な活用方法についてはFPなどの専門家に相談しましょう。
〇家計に余裕があるなら介護保険の加入も検討する
介護や認知症については、将来多くの人が直面する重要な問題で、介護には多額の費用がかかります。
50代ではまだ危機感を感じにくいのですが、家計に余裕があるのであれば、早めに加入した方が保険料が安いので、介護保険への加入も検討すべきです。
保険不要派の人は?
子どもは独立してしまったし十分な貯蓄もある、という人にとっては、保険は不要と考えることもできます。
お金を老後資金として確保しておくことも必要です。
この場合、老後生活は、国の公的保障と貯蓄で備えるということになります。
医療費をしっかりと確保しておくために、専用の資金として区分管理しておいた方がよいでしょう。
また、国の公的保障は、社会保障費の財源不足から、毎年のように見直されています。
医療費の負担が、あまりにも家計を圧迫するのであれば、保険の活用も考えなければなりません。
国の公的保障の改定内容には、常に関心をもっておくことが大切です。
50代が終活で保険を見直すポイントまとめ
以上、50代の終活で保険を見直すポイントについて見てきました。
50代という年齢が同じであっても、必要な保障は同じではなく、健康状態、資産状況や家族構成などによって異なります。
多くの人が役職定年で収入が低下しますので、限られた収入の中で必要な保障を確保しつつ、効率的に老後資金を蓄えるための工夫が必要になります。
そのためには「余分な保険料は支払わない」ということが重要です。
人生100年時代では、50代で保険の見直しをしてもまだまだ先が長いです。
その間、見直した保険が陳腐化しないか不安になります。
50代での保険見直しを最後とするのではなく、保険の見直しは定期的に行っていくことをおすすめします。